director Chikakane Takushi

「映画を超えた現実」が映画になって感動を呼ぶ

2018 年に全国公開された前作の映画『恐竜の詩』。丹波市で行われたその撮影中に、 今回の映画の舞台となった物件の存在を知りました。元暴力団事務所を住民運動の末 に行政が買い取ったという経緯を持つ「成松第三公民館」です。そこで聞いたのは、「過 疎の町に3つも公民館は要らないよね」という地元の人々が持て余した“負の遺産”への 悩みでした。「ならば、映画館にしたらどうですか?」という何気ない僕の一言でスタートし た「丹波市映画館復活プロジェクト」。映画監督の本能ゆえか、つい「みんなが困っている 場所が、みんなが喜ぶ場所に変われば大団円ドラマになる」と思ってプロジェクトを引き 受けてしまいました。ところが、その後、世の中はコロナ禍で激変してしまいます。私たち の想像をはるかに超える難題が次々と巻き起こり、資金難にも見舞われ、「もうダメかも」 と思うことも一度や二度ではありませんでした。

それでも、そのたびに危機を乗り越える温かい手が差し延べられ、奇跡が何度も起こり ました。丹波市という「人情あふれる場所」だからこそ復活した手づくり映画館。全国に誇 れる「善意の奇跡の連鎖」を、ぜひお楽しみください。

映画「銀幕の詩」監督 近兼拓史

Profile

1962 年、兵庫県神戸市生まれ。作家、映画監督、マルチメディアプロデューサー。阪神淡路大震災をきっかけに庶民のささやかな幸せの再建を志向し、庶民のための娯楽作品制 作をライフワークとしている。ハリウッドの映画学校 ISMP イン ストラクター/日本事務局長、一般社団法人ジェネリック家電 推進委員会委員長、FIM.AMA 公認オートバイ世界最速記録 保持者など多彩な顔を持つ。現在、「近兼拓史のウィークリーワールドニュース」(ラジオ大阪、ラジオ日本他)を毎週放送中。本作は『たこ焼きの 詩』『切り子の詩』『恐竜の詩』に続く下町の詩シリーズ第4作。